オレ様社長の家族経営企業

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私がフリーランスになる直前に勤めていた会社は、社長と副社長(奥さん)、専務(長男)が取り仕切る、絵に描いたような家族経営企業でした。

当時転職先を探していた私と、働き手を探していた社長の構想が合致すると、知人に紹介されて話を重ねること約半年。

雇用条件の細部に渡るまで打合せをし、会社の新規事業部を立ち上げて私を迎えてくれました。

その会社はそれまで、社長が先代から受け継いだ自社ビルの管理運営を行う母体企業A社と、別法人B社が行う4件の施設運営を生業としていました。

しかし各施設をまとめる人も不在で、連携も全く取れていないほか、各施設が経費を好き勝手に運用していたのです。

毎月すさまじいほどのムダな費用と労力をかけているという惨状でした。

そこでA社とB社の総合的な企画・管理運営を行うハウスエージェンシーを主業務とし、さらに社外のコンサル業務や広報企画をサブ的に行うため、A社に私を受け容れる新規事業部を設けたのです。

 

ただし、ここに辿り着くまでに不安がなかった訳ではありません。

まずはA社には事務所というものが存在せず、全ての業務を社長の自宅で行っていました。

「現場スタッフ以外は家族しかいないから、事務所を作るのも勿体ない」という理由でした。

そのため、初めは私も社長宅に出勤し、キッチンで仕事をするよう言われましたが、交渉を重ねて自社ビルの空き室を何とか用意してもらいました。

 

しかしネット回線をはじめ、電話回線、スタッフのデスク、事務機器に至るまでも「なぜ用意しなくてはならないのかがわからない」とのこと。

早くも入社したことを誤ったかと思いましたが、次第に事務所が作られていく様子を目の当たりにすると社長は、無邪気な子どものようにどんどん上機嫌になっていくのです。

必要な機器がすべて揃い事務所も完成し、副社長や専務の出社スケジュールまで、社長が率先して作成したほどです。

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ところがフタを開けると、出勤するのは私一人。

社長一族は誰も出勤しないどころか、今まで通り各施設に好き放題を容認しながら、ムダが減らないと私を責め立てるようになったのです。

 

しかも「社外の売上が月100万を超えるまで、給与は支払わない」と言い出す始末。

それまで私が勤務していた会社は、給与が遅れたり出ない月まであったため、生活が立ちゆかなくなったことで、転職先を探しているということは社長も了承していました。

 

さすがにそれは雇用条件に反すると進言した、4つある施設のうちの施設長の一人が、「社長に意見した」という理由で即刻解雇。

施設長の解雇で一人分の給与が浮いたため、翌月から私にも給与が出ることになったのですが、雇用条件で取り決めた額の半分以下でした。

 

この時点で会社を去る勇気が必要でしたが、私をこの会社に紹介してくれた人も入社する話が進んでおり、彼が来れば会社を変えられるかも知れないと望みを繋ぎました。

しかし徐々に社長の要求はエスカレートしていきます。

会社全体の管理運営を目的に新事業部を立ち上げたのに、私は一日のうちの5時間で社外からの売上を月100万円以上作ること、それ以外の時間は全て施設の現場入りし、24時間体制で勤務することを強要されました。

やがて紹介者も「この会社はヤバい」と、入社の話を断ったことで、社長の怒りの矛先は私に向けられたのです。

社外からの売上を月100万円以上から、1000万円以上に上げてきたのです。

 

当然、睡眠時間も与えてもらえない状態で、そんな売上が上がるわけもありません。

私は会社をよくするための、現状見直しを冷静に提案したところ、「オレ様に意見するなんざ100年早い! ふざけやがって、とっとと出ていけ! お前なんざクビだ!」と怒鳴られました。

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私は渡りに船と思い、さっさと会社を去りましたが後日、弁護士を通じて「会社の売上を上げられなかった事による迷惑料と損害賠償」が請求されてきました。

意味がわからないと相手弁護士に連絡を入れたところ、弁護士も困惑した様子で「言い出したら聞かないので、一応形だけ送りました。形だけですので、すぐに請求は取り下げさせます」とのこと。

 

その後、やり方を変えなかったことで、やはり上手くいかなくなったのか、自社ビル経営以外からは撤退したと聞いています。

 

 

投稿者:匿名次郎

 

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