社会経験の有無で異なる「ブラック企業」の定義

社会の荒波に揉まれていない若者は打たれ弱い!?

「ブラック企業」は定義しづらい曖昧な概念

今ではすっかり日常語として定着した「ブラック企業」という言葉。では「ブラック企業」ってどんな会社のこと? と訊かれて、明確に答えられる人がいるだろうか。

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厚生労働省でもはっきりとした基準を打ち出しているわけではなく、労働基準局の資料に下記のような記載が見られるだけだ。

≪一般的な定義としては労働者を長時間労働させる企業やパワーハラスメントなどで労働者を精神的に追い込む企業などがマスコミ等に「ブラック企業」と言われています。≫

「マスコミ等に言われています」とあるように、マスコミによっていつの間にか作られたイメージが強いようだ。

ただ「長時間労働」や「パワーハラスメント」などは重要なキーワードになっていて、これは厚生労働省による是正勧告の対象になる。とくに違法な長時間労働をさせていて、年に3回の是正勧告を受けた企業は、社名を公表するというペナルティが課せられることにもなった。

だが、それでも明確にしづらいのは、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)といったさまざまなハラスメントをどう認定するかということだ。

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増え続けるハラスメントは、本当にハラスメントなのか

かつて職場で起こりがちなハラスメントといえば、パワハラとセクハラぐらいだった。それぞれ暴力的に圧力を加える嫌がらせ、性的嫌がらせとして社会問題にもなった。

それが今やモラルハラスメント、マタニティハラスメント、学歴ハラスメントなどなど30種類を超えるハラスメントがあるといわれる。そして、これらのハラスメントが社内で起こっているという噂を立てられただけで、その会社は「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまうのである。

社会に出れば、ていどの差こそあれ、嫌がらせや外部からの圧力は避けて通れない。ライバルが足を引っ張りにくる、性格の歪んだ上司や先輩が理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる、誠意も言葉も通じないクレーマーが押しかけてくる、その他さまざまな障壁を乗り越えなければ、社会の荒波の中では生き残れないのだ。

せいぜいアルバイトぐらいしか経験したことのない大学生が、就職して初めにぶつかる壁が、このような「予想外に冷たい世間の風」ではないだろうか。「誰も守ってくれない」「自分で戦わなければならない」という厳しさに、大きな戸惑いを感じるようだ。

だから、ちょっとしたことでも悲観的にとらえてしまう。
上司から厳しく叱責された。
仕事が忙しくて休暇を取りにくい。
仕事が自分の性格に合っていない。
得意先の人に嫌なことを言われた。
「何でも訊け」と言われたのに、訊きに行ったら「自分で考えてから訊きに来い」と突き放された。

こんな些細なことで傷ついて「この会社はブラックだ、辞めたい」と思い詰めてしまうのだ。

社会人としてあるていど揉まれてくると、神経も図太くなってきて、多少のことでは動揺しなくなる。上司が耳元で怒鳴っていても、反対側の耳へ抜けるぐらいになれば、ブラック企業の認識も自分なりに変わってくるはず。

ブラック企業の定義が年ごとに変化して一定しないのは、同じ会社でも人それぞれの社会経験によって「ブラック度」が異なるからともいえる。つまり、打たれ弱い新入社員が入社初日でブラック認定するような会社でも、ベテランの中堅社員にとってはホワイト企業かもしれないということなのだ。

 

平藤清刀



 

 

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