罰則・罰金
罰則は、法令や規則に違反した場合に適用される規定。罰則があることで、法令や規則の遵守を強いる効果が期待できる。罰金は、違反行為があった際に科す刑事罰の1つで、違反者から強制的に金銭を徴収すること。
会社の規則で罰則と罰金をセットにしてはいけない
●会社が罰金を定めるのは違法
世の中にはいろんな規則がある。どこへ行っても規則であふれていて、人が社会生活を営むうえで、規則は常についてまわるものである。
多くの場合、規則には罰則が設けられている。「この規則を破ったら罰を与えますよ」という規定を設けて強制力を持たせているのだ。
罰則は、違反者があるていどダメージを被らなければ効果がない。会社の規則に違反した場合、最も重い処分は解雇だが、軽いものでは訓戒、停職、自宅謹慎などがある。もっとも軽い処分で首はつながっても、後の昇進や昇給に暗い影を落とすから、軽く済んだと手放しで喜んではいられない。
会社によっては、罰則の中に「罰金」を設けている場合もある。一定額の金銭を納めることで、違反行為を免責してやるという趣旨なのかもしれないが、じつはこれが違法行為になることを知っている経営者がどれだけいるだろうか。
そもそも「罰金」は、強制的に金銭を徴収する刑事罰の一種である。だから本来は、国家が自然人または法人に対して科すもの。会社が被った損害の回復や懲罰が目的だとしたら、法律で禁じている「自力救済」または「私的制裁」になりかねないということだ。
●罰金で社員を縛るブラック企業
書類の記入漏れ、処理の遅れ、誤字脱字の類まで、どんなミスにもペナルティーとして、給料から「罰金」が天引きされる会社があるという。
労働基準法第16条には「賠償予定の禁止」として「使用者は労働契約の不履行について、違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」という規定がある。
また同法第24条では、賃金の支払いについて「直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とある。罰金はもちろんのこと、その天引きも違法というわけだ。
会社の営業車で飲酒運転をしたとか、安全運転義務を怠って重大な事故を起こしたというような重大な過失でもない限り、些細なミスで生じた損害は弁済する必要がないとされている。
ところが、いわゆるブラック企業では、社員を縛り付けるために何かにつけ罰金を取りたがる。
・書類の誤字脱字1つにつき罰金100円
・遅刻10分につき罰金500円(交通機関の遅延でも遅刻は遅刻)
・欠勤1日につき罰金1万円
・お客様からクレームを受けたら1件につき罰金5000円
・ノルマを達成できなかったらマイナス分を給料から天引き
規則というよりは、ほとんど難癖に近いものもある。
ノーワーク・ノーペイといって、働かなければ賃金が発生しないという考え方のもと、仕事をしていない期間分の賃金を差し引くことは違法ではない。だがあくまで「仕事をしていない期間分」だけで、1日欠勤したことを理由に2日分の賃金を減らすことは違法である。
では、懲戒処分としての「減給」も違法なのかというと、そうではない。会社には「懲戒権の行使」が認められているから、ペナルティーとして減給を科すことはできる。ただし、差し引ける額には、法律で制限を設けてある。
・1回あたりの減給は、平均賃金の半日分を超えないこと。
・減給になる処分が複数回重なったとしても、1カ月の減給額は賃金総額の10%まで。
ブラック企業の多くは、法律の制限がほとんど無視されている。では、こうして社員から巻き上げたお金を何に使っているのだろうか。
ほんの一例だが、忘年会や社員の飲み会に充てて還元するならまだ良心的といえる。全額を着服して、高級車やクルーザーを買って遊んでいる、とんでもない社長もいるという。
「毎日遅刻するわけじゃないし、500円くらいならいいや。他に行くアテもないし」と諦めてブラック企業と分かっていながら入社しようとする人がいるかもしれない。だが、罰金そのものが違法であり、正当な報酬も期待できないのだから絶対に避けるべきである。
平藤清刀
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