36協定

労働基準法に定める労働時間と休日の原則を超えて労働させるには、労使協定を締結して行政官庁に届け出る手続きが要る。この労使協定のことを同法第36条の規定から「36協定」と呼ぶ。

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36協定ってナニ? 【36協定:コラム】

 

従業員に劣悪な環境での労働を強いる会社のことを、いつの頃からか「ブラック企業」と呼ぶようになった。
その定義は必ずしも一定ではなく、年ごとの社会情勢によって少しずつ変化している。
過去3年の例を見てみよう。

2012年……月80時間~100時間をこえる超過勤務を強いられ、従業員が過労死する例もある。
2013年……労働法やその他の法令に抵触するか、違法スレスレのグレーゾーンでの労働。
2014年……過酷なノルマや長時間労働。

どの年にもほぼ共通しているのは、労働時間が長いこと。定時退社の時間を過ぎているにも関わらず拘束され、サービス残業を強いられるケースが多いようだ。
定時でいったんタイムカードを押しても、その日の仕事が片付いてないから、残しておくと翌日以降にどんどん溜まってしまうため残業をせざるを得ない。あるいは、たいした仕事があるわけではないのに、残業することを当たり前とするような雰囲気が会社に蔓延していて、自分ひとりだけ定時で帰りづらいという事情もある。
高度成長期のように、会社に泊まり込んでまでがむしゃらに働く社員を「モーレツ社員」と呼んで、国を挙げてもてはやした時代があった。そんな大昔の長時間労働を美徳とする風潮が、日本人のDNAにすり込まれているとは思いたくない。だが、ブラック企業の問題は、もはや「勤勉」という美辞麗句では収まらない。

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労働基準法では原則として1日8時間、1週について40時間を超えて働かせてはならないと規定されている。しかし原則には例外がある。ほとんどの会社では、1日8時間で区切りよく仕事が終わることはまずないだろう。だから法定時間外の労働は認めるけれども、上限を決めましょうという相談を、会社側と労働者側が話し合って協定を結ぶ。それを労働基準監督署に届け出たうえで、法定労働時間を超えて働かせても良いことになっているわけだ。その協定のことを、労働基準法第36条に基づいて締結されることから「36(さぶろく)協定」という。

36協定は、労働者の過半数が組織する労働組合か、労働組合が無い会社では、社員代表と会社との間で締結されることになっている。
その有効期間は、労基署へ届け出てから1年間だ。だから労働者は、1年ごとにあらためて会社側と交渉して36協定を結ばないと、無制限に時間外労働をさせられる恐れがある。いわゆるブラック企業は、そもそも36協定が無いか、あっても無視されているのだ。

またブラックとはいえないまでも、ノー残業デイを設けている会社にもサービス残業が少なくないというウソみたいな話がある。つまり「今日は残業しないで帰りましょう」といわれても、仕事の総量は減らない。だからタイムカード上は定時で帰ったことにして、結局残業をしているのだ。タイムカードに記録されないから、その分は無給、すなわちサービス残業になるわけだ。
中には仕事が好きで、自ら進んで残業を引き受ける人がいるかもしれない。だから、たんに残業が多いというだけでは「ブラック企業」と決めつけることはできないが、ブラック企業の条件に「長時間労働」が毎年挙がっていることから、客観的に見極める材料にはなるだろう。

 

平藤清刀




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