過重ノルマ

客観的にみて達成がそうとう困難な目標を設定する、待遇を成績主義にすることなどに加えて、達成できなかったときのペナルティとしてリストラや左遷をチラつかせ、心身ともに圧力をかけること。

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重すぎるノルマに押しつぶされる人たち 【過重ノルマ:コラム】

 

製品なりサービスなり、有形無形を問わず顧客に「モノ」を買ってもらって収益を得る以上、一定の売上目標を設定するのは、会社としてごく当たり前の姿勢である。

売れようが売れまいがどうでもいいという態度では、従業員は「頑張らなくても給料がもらえるんだから」と怠けてしまい、会社はたちまち倒産の危機に瀕する。

営業マンがよく「ノルマがキツい」と弱音を吐く。酒が入れば上司の悪口も出る。では「キツい」というのは、いったい何がキツいのだろう。

営業マン本人の努力が足りないからキツいと感じているだけなのか、それとも初めからとうてい達成できない過重なノルマを課せられているのに、それでもなんとか頑張ろうとするから息切れしているのか。

前者であれば本人の努力が足りないのだから、一概にブラック呼ばわりするのは会社が気の毒だ。先輩や上司が適切に指導したり、ときには「もっと頑張れよ」と叱咤激励したりしながら、本人がさらに努力すれば解決するかもしれない。

後者であれば、話は変わってくる。

会社が過重なノルマを課す理由はいくつかある。ひとつは、社員を初めから使い捨てるつもりの場合。俗に「クラッシャー上司」ともいわれ、社員を育てる気などさらさらなくて、心身ともにボロボロになるまで酷使する。

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日本人の国民性はまじめで勤勉だ。上司の命令なら、多少の無理でも聞いてしまう。無理でもなんとかノルマに近づけようと頑張るから、それなりに成果は上がるかもしれない。しかしそれは、上司からの過剰なプレッシャーと長時間労働(しかもサービス残業)という無理に無理を重ねた結果だから、続けているうちに必ずパンクする。パンクしたときが捨てられるときである。

そのパンクの仕方も、過度なプレッシャーと長時間労働で心を病んでしまい、うつ病などの精神疾患を患ったり、ひどい場合には過労死したり自ら命を絶ってしまうケースも少なくない。

某大手家電量販店の店長が過重なノルマに耐えかねて、相次いで自殺した事件はまだ記憶に新しい。報道によると、取締役本部長が主催するテレビ会議というのがあって、前年比の売り上げを下回った店長は、その会議の席で1時間近く吊るし上げを食らうのだという。

つるし上げられたって、売れないものは売れない。ノルマを達成できなかった店長は会議の日が近づくにつれて、消えてしまいたいような気持に追いつめられていただろう。

もうひとつの理由は、嫌がらせである。日本の労働者は、労働基準法をはじめとする労働法によって、簡単に首を切られないように守られている。だから過重な労働を強いて、自ら辞めるように仕向けるわけだ。

過重なノルマを課するほかにも、ほとんど仕事のない閑職に移動させる。逆にクレーム処理の最前線に立たせて心休まる隙を与えないなど、嫌がらせの方法はいくらでもある。

初めから目的が嫌がらせなので、改善するように申し入れたって会社は聞いてくれない。かえって「あと少しで壊れてくれる」と、変な期待をされるだけだ。

「ブラック企業と分かった時点で辞めればいいのに」という声はよく聞く。だが、人間の心はさほど強くない。辞めた後に再就職できるアテがなかったら、我慢するしかない。前述したように、日本人の勤勉性ゆえになんとか頑張ろうとすることがかえって仇となって、会社につぶされて行くのである。

 

平藤清刀



 

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