セクシャルハラスメント(セクハラ)
一般に「性的嫌がらせ」のことで、相手が望まない性的言動のすべてがセクハラになる。セクハラに当たる言動と当たらない言動の境界は極めて曖昧で、受ける側の感情に左右される要素が強い。
加害者に自覚のないケースが多い
ハラスメント(harassment)の元の意味は「人を困らせること」「嫌がらせ」「いじめ」のことで、英語では「悩ませる」「苦しめる」という意味も含む。
つまりセクハラとは性的な言動で相手を不快にさせることをいい、言葉を発した側にそんな意図はなくても、受け手が不快に感じたらセクハラをしたことになってしまうから厄介だ。
同じ職場内に限らず、役所の窓口で係員から不快な言葉を言われたというケースも、セクハラとしてしばしば問題になっている。
では、何を言ったらセクハラになるかといえば、背景に性的な関心や欲求がある場合。スリーサイズを訊いたり、体調が悪そうな女子社員に「今日は生理か?」と訊いたりするのは典型なセクハラだ。
線引きが難しいのは、言われた相手によって受け取り方が変わるときだ。若くてイケメンのAさんに言われたら嬉しいけど、風采の上がらない中年男のBさんに言われたら気持ち悪いという場合は、Bさんには気の毒だがセクハラをしたことになってしまう。
言葉以外にも、女性の目につきやすい場所にヌードポスターを貼る、しつこく食事やデートに誘う、ボディタッチなどの行為もセクハラだ。
では、なぜセクハラが発生するのか。「男子社員がいやらしいから」という単純な理屈では説明できない、構造的な問題が潜んでいるようだ。セクハラが発生しやすい職場には、大きく分けて3つの共通点を見出すことができる。
・若い女性従業員が多い。
・中高年の男性従業員が多い。
・男尊女卑の気風がある。
とりわけ年齢の高い男性従業員ほどセクハラに対する認識が低く、「昔はこれくらい当たり前だった」と罪の意識すら薄いといわれている。会社には従業員の安全を確保する「安全配慮義務」があって、そのための意識啓発や社員教育、現状チェックなどをこまめに行わなくてはならない。いわゆるブラック企業は従業員の安全を守るという意識が希薄で、そのような義務があることすら知らないから、セクハラが横行しやすい環境が醸成されてしまっているようだ。
セクハラは何も同じ職場の中で起こるとは限らない。ホテルの従業員(女性)が男性客から「彼氏いるの?」「脚細いね」などの言葉をかけられるケースもある。客だから何をしても良いというわけではない。このような言動も、れっきとしたセクハラである。
さらに、同性同士のセクハラ事案もあるという。
「彼氏(彼女)と、最近どうなってんの?」「結婚の予定は?」「子どもはまだつくらないの?」など、軽い気持ちで言ってしまいがちだ。本人は結婚する気がないのかもしれないし、結婚していても子どもをつくらない(できない)事情があるのかもしれない。
そういったことに配慮せず、心の中に土足で踏み込んでくるようなことを言われるほうは、さぞかし不愉快だろう。このように同性間でもセクハラになることを、しっかり認識しておこう。
平藤清刀
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