飴と鞭

営業成績が良好な社員には特別ボーナスを支給してやる気を奮い立たせる一方で、成績の芳しくない社員には給与の減額、暴力的な制裁、屈辱的な行為をさせるなどの罰則を課す管理手法。

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普段は鬼のように厳しい上司が、たまに仏になる

●営業成績優秀者には表彰と豪華な賞品

ブラック企業はどうやって社員を管理しているのか。長時間労働や休日出勤は当たり前で、しかも残業代は支給されない。営業ノルマを達成するために自分で商品を買い取る、いわゆる「自爆営業」も珍しくないような会社で、なぜ働き続けるのだろうか。
その謎を解くカギが「飴と鞭」の使い分けである。

とうてい達成できないような厳しいノルマでも、頑張って達成する社員が現れる。そのような社員は、他の全社員が見ている前で表彰する。「社長賞」でもなんでもいい、社内だけで権威が通用する賞を適当に作る。そして特別ボーナスや海外旅行など豪華な賞品を与えて、とにかく褒めちぎるのである。

そういう光景を目の前で見せつけられたら、「自分も頑張ったらあんなふうに社長から褒めてもらえて、特別ボーナスも手にできる」と考えて決意を新たにする。一種の集団催眠である。社長以下の幹部連中が感動して涙ぐむような演技でもして見せたら、その効果は倍増するだろう。

一方で、成績が振るわない社員は、徹底的に冷遇する。給料の減額で済んだらまだ優しいほうで、幹部社員による暴力的な制裁や屈辱的な行為をさせる罰則が待っている。

そういう会社によくあるのが「完全歩合制」や「年俸制」という給与体系だ。成果主義といえば聞こえは良いが、成績が悪ければ給与を支払わずに済むし、もちろんボーナスも支給しない。

社員から「うちの会社はけっこう儲かっているはずなのに、ボーナスはないのですか?」と訊かれたら、「年俸制で契約しているプロ野球選手は、ボーナスをもらってないだろ?」と屁理屈で切り返す逃げ道を用意してある。

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●辞めたいけど辞められない

ブラック企業を辞めたいと思っても、簡単には辞められないという声もよく聞く。ブラックとはいえ職歴にカウントされるから、履歴書に書く転職回数が増えてしまう。せめて円満退社して、次の就職に不利な条件をなるべく減らしたいと思っても、現状はそう単純な話ではないらしい。

意を決して退職願を持って行くと、ふだんは鬼のように厳しく鉄拳制裁も辞さない上司の態度が豹変する。
「俺はお前の真面目さを買ってるんだ。誰だって初めから大きな成績は残せないさ。俺はお前を信じてるよ」などと、心にもないことを言って優しく諭す。

言われたほうは、ブラック企業という地獄の中で仏を見たような気分になり嬉しくなる。

さらに上司が「この前表彰された○○君だって、入ったばっかりの時はお前より売れなかったんだぞ」と追い打ちをかけると、「そうか、頑張れば報われるのか?」とやる気まで湧いてきて、すっかり上司のペースにはめられてしまうのだ。

これは人間の心理を巧みに利用して懐柔するケースだが、あからさまに社員を脅して無理やり繋ぎとめるケースもある。
退職を申し出た社員に対して、

「お前の代わりを連れてこい」
「過去にお前がミスした分の損害を弁償してから辞めろ」
「懲戒解雇ということにして、再就職できないようにしてやる」

などと無理な交換条件を迫ったり脅迫したりして「逃げられない」という意識を植え付けるのである。

そのような条件を呑む必要のないことぐらい分かりそうなものだが、恐怖や不安のあまり思考停止の状態に陥ってしまうと、冷静な判断力を失う。そして、たまに少しだけ褒められると、その人をあたかも優しい人であるかのように錯覚して嬉しくなり、もう少しだけ頑張ってみようかなという気になるのだという。

ブラック企業はこのようにして「飴と鞭」を巧みに使い分け、人の心をコントロールしながら、劣悪な条件で社員が潰れるまで搾取するのである。

 

平藤清刀




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