労働基準監督署

法令で守られるべき最低基準の労働条件が遵守されているかを監督する官庁で、職員は労働基準監督官、厚生労働事務官厚生労働技官等で構成される。

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労働基準監督署って何をやっている役所?

●警察官と同じ職務権限をもつ監督官

「仕事が忙しいわけでもないのに、有給休暇を許可してくれない」とか「サービス残業を強いられる」というように、会社から不当な扱いを受けたときに「労基署に通報してやる!」と上司に啖呵を切ったことのある人はけっこういるはず。
労基署とは労働基準監督署のことだが、具体的にどんな仕事をしているのか、正しく知っている人は少ないのではないだろうか。
たとえば盗難に遭ったとか、電車の中で痴漢に遭ったというときは警察へ通報する。火事や急病人なら消防署へ通報する。このように、世の中で起こる様々な事案には、処理を担当する役所がある。労働に関係する事案や相談事を担当しているのが、労働基準監督署というわけだ。

具体的には「劣悪な条件で働かせている」「サービス残業を強要する」「有給休暇を与えない」など、会社が労働基準法に違反していないかを監視し、もし違反行為があれば指導・監督する。
労基署の監督官はたんに労基署の職員という立場ではなく、国家試験に合格した厚生労働省の専門職員で、司法警察権を持っている。だからもし会社が法令違反を犯している場合には是正のための指導や調査を行うほか、悪質と判断したら強制捜査を行い、事と次第によっては逮捕権も行使できる。
その点では労働者の強い味方ともいえるのだが、一方で「腰が重い役所」としても知られている。

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●労基署をうまく使うには

劣悪な環境で働かされていることを労基署に訴えても、「それはヒドいですね。すぐ指導しましょう」という話にならない。なぜなら、労基署の監督官には警察と同じように「民事不介入」の原則があるからだ。たんに会社の経営者や上司とウマが合わず働きづらいとか、見解の相違でケンカしたというような個人的なもめ事では労基署は動いてくれない。労基署に駆け込んでも「まずはよく話し合って」と言われるのがオチだ。

逆に監督官が得意とするのは、賃金の不払いやサービス残業など労働法規に関する問題だといわれている。相談を持ち込むときは、タイムカードや給与明細、業務日報、上司から業務を指示してきたメールなど、なるべくたくさんの証拠を集めて、可能ならば経営者や上司との会話もこっそり録音しておくと良い。
労基署は“より悪質な事案”から優先的に対応するので、会社の違法行為が具体的にわかるもの、日付を特定できる証拠は多いほど良い。

そうは言っても、証拠集めは想像以上にたいへんな作業だ。何から何まで自分でやらないと相談にも乗ってくれないかというと、決してそんなことはなくて、電話やメールでの相談も受け付けている。このときも匿名で相談するより実名で連絡先を明らかにしておくと、信憑性が高く悪質性も強いと判断されて、優先的に動いてくれるという。
労基署をうまく利用するには、たんに「なんとかしてくれ」という漠然とした訴えより、監督官が得意な法律上の問題に絞り込んで証拠を集め、悪質性と緊急度が高い問題であることを前面に押し出すことが肝心だ。

 

平藤清刀




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