拘束時間と労働時間
・拘束時間…事業所に入ってから退出するまでの時間で、使用者の監督下にある時間のこと。休憩時間も含む。
・労働時間…始業前の準備から終業後の後始末に要する時間までをいい、休憩時間は含まない。
≪拘束時間=労働時間≫ではない 【拘束時間と労働時間:コラム】
●拘束時間と労働時間の違いとは?
拘束時間と労働時間は似て非なるもの。よく混同されるようだが別物である。
拘束時間とは、一言でいえば「使用者の監督下にある時間」のこと。だから休憩時間も、労働者の自由に使える時間で給与の対象ではないけれど、拘束時間に含まれる。
一方、労働時間とは、体を動かして働いている時間だけを指すのではなく、始業前の準備、朝礼、次の指示を待っている「手待ち時間」や「待機時間」、仕事が終わった後の片付け、業務上必要ならば仮眠時間まで含んで労働時間である。ただし通勤時間は、どちらにも含まれない。
「始業前の準備や朝礼なんか、いくらやってもカネにならないから労働時間ではない」と言って憚らない社長さんがいるようだが、これは明らかに認識を誤っている。もしそんな社長のもとで働いているなら、早急に改めてもらわないといけない。
またよく問題になるのが、着替えの時間。ある会社では、始業前の段取りとして、社員やパートタイマー、アルバイトに至るまで全社員に対し次のようなルールを定めている。
・出勤したら始業時間までに作業服に着替える。
・着替えてからタイムカードを押す。
・退社時は私服に着替える前にタイムカードを押す。
つまり「作業服を着ている時間だけが労働時間ですよ」というわけだ。だが制服や作業服の着用が義務付けられている職場では着替えも始業前の準備に相当するので、このようなルールは誤りである。
●拘束時間なのに労働時間ではない「休憩時間」とは?
お昼の休憩時間に、その日の当番を決めて電話番をさせている職場がある。当番に当たった人はオフィスで電話番をしながらお昼ご飯を食べ、電話が鳴ったら食事を中断して応対しなければならない。
賃金は労働に対して支払われる対価なので、自由に労務から離れることができる休憩時間は賃金が発生しないとされている。だが「電話番」という仕事をやっているし、オフィスに居ることを強いられるので、たとえ電話がかかってこなくてずっとヒマだったとしても休憩時間とはいえない。
もし「休憩時間もお給料の対象になります」と書いてある求人広告があったら要注意。電話番に限らず、給料が発生する何かが隠されている疑いが濃厚だ。
ちなみに労働基準法第34条で、休憩時間について定めてある。
1日の労働時間が、
6時間以下の場合――休憩を与えなくてもよい
6時間を超え8時間以下の場合――45分
8時間を超える場合――60分
「最低これだけの休憩を与えなさい」という規定だが、上限については定められていない。見方を変えると、拘束時間がやたらに長いのに、賃金が発生する労働時間が短いことも起こり得るということ。
自動車運転業務については拘束時間の規定があるものの、他の業種には明確な規定がない。だから求人広告を見る際には、給与や休日など基本的な条件のほかに、拘束時間、労働時間、休憩時間の3点にも注意したほうが良いだろう。
平藤清刀
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