社内カースト

紀元前にアーリア人がインド亜大陸を征服したときに、先住民族を肌の色で差別したことに端を発し、現在に至るまでインドに残る身分制度。転じて会社内の人間関係を、皮肉を込めて「社内カースト」と呼ぶことがある。

ef2

人の集団には自然発生的に「階層」が生まれる

●紀元前に始まった身分差別が根強く残る

インドでは憲法でカースト制度を廃止したが、紀元前から続いていた身分制度が、人の意識からそう簡単に払拭(ふっしょく)されることはなく、今なお根強い身分差別が残っているという。

上から「バラモン(僧侶)」「クシャトリア(軍人または貴族)」「バイシャ(商人)」「シュードラ(隷属民)」の順に分けられ、最下層の「シュードラ」の下にはさらに「不可触民」という、もはや「人」ですらないとされる階層がある。

カーストは世襲で、いったん最下層に生まれたら生涯上がることはない。また他の階層との結婚もできない。唯一の救いは、善(よ)い行いをすれば上の階層に生まれ変わるという信仰だ。そのため、下の階層ほど自殺する者が多いといわれている。

階層というものは、程度の差はあっても、自然にできてしまうものだ。それは動物の世界にもいえること。人はそれを「制度」や「社会システム」として整備する術(すべ)を知っているにすぎない。江戸時代の日本にも「士・農・工・商」という身分制度があった。

会社に勤めていても、役職とは別の次元で、周りに対して支配的に振る舞う人と従う人に分かれてしまうという現象が起こる。そのような暗黙の身分階層が、皮肉を込めて「社内カースト」と呼ばれている。

qegvr

●正社員・契約・派遣・アルバイト・出入り業者

会社によって事情は異なるだろうが、社内カーストを階層順に列挙してみると――

正社員
契約社員
派遣社員
アルバイト
協力会社の社員

このような階層が、自然に形成されていないだろうか。

正社員をさらに中堅と新人に分けると、当然に中堅の方が上になるが、物流業界のようにアルバイトやパートタイマーを大量に採用している会社だと、中堅と新人の間に「ベテランのパートタイマー」が入る場合もある。

社内カーストの実態は予想外に切実で、たとえば正社員と契約社員は昼休みに社員食堂が使えるのに、派遣社員はそれが許されず、更衣室を兼ねた休憩室でコンビニの弁当を食べている例があるという。

歴史的にみて日本は、武士が庶民を支配していた時代が長い。しかもその武士の中にも身分があり、「お殿様」と「家来」という主従関係があった。そんな時代に終わりを告げたのが明治維新で、わずか147年前のことである。

だから日本人のDNAには、「支配するもの」「支配されるもの」という身分制度を受け入れやすい性質があるともいわれている。それが本当かどうかは分からないが、頭から否定しづらい説ではある。

先の社員食堂の話ほど極端ではなくても、たとえば新人は先輩より早く出社して事務所を掃除しなさいとか、女子社員は中堅・新人を問わず同じ部屋にいる人にお茶を入れなさいという、時代錯誤的な不文律を強いられている例は少なくないだろう。

さすがに今では「そんな古い体質は変えて行こう」とする会社が増えているが、トップに立つ人の頭の中が古いままだと、なかなか進まないようである。

ただし、社内カーストと新人としてのポジションは別であって、これを混同しないように注意したい。

雑用を嫌がる新人が増えているといわれるが、雑用をやってくれる人が居なくては大きな仕事も動かない。仕事を任せられるほどのスキルが育っていない新人に雑用がまわってくるのは、社内カーストの底辺だからではなく、必要だからということを正しく認識しよう。

 

平藤清刀



Copyright ブラック企業 2015 All Rights Reserved.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
PAGE TOP ↑