コンプライアンス(法令順守)

英語の元々の意味は「命令、要求に従うこと」。カタカナ語化している「コンプライアンス」は、企業が法令や社会規範はもちろん、自ら定めた企業倫理に則って企業活動を行うことを指す。

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企業がコンプライアンス専門部署を設けて社会的な信用を自ら守る時代に

●法令や倫理に反する企業は存在を否定される

遊ぶ金が欲しくて架空請求を繰り返したとか、女に貢ぐために会社の金を横領したという個人レベルの不祥事から、本当は経営が芳しくないのに業績が上向いているように見せかける粉飾決算のように会社ぐるみの不祥事に至るまで、企業にはさまざまな不祥事がある。

会社ぐるみの不祥事は論外だが、大多数の真面目に働いている社員の中のたったひとりが不祥事を起こしただけで、企業イメージそのものが大きくダウンする。その結果、社会的な信用を失い、業績不振に陥って倒産してしまうケースもある。たとえ倒産を免れても、いったん失った信用を取り戻すことは容易ではない。

だからどの企業も、社員の不祥事をいかに未然に防止するかという対策に頭を悩ませているのだ。

人間は誘惑に弱い生き物である。たとえば、たまたま入ったトイレの個室に、サイフが置き忘れてあったら……。絶対ネコババしないと言い切る自信のある人は、そう多くはないだろう。

しかしそこで誘惑に負けてしまうと、後々その人自身にツケがまわってきて、ひいては会社全体の不祥事として世間から非難を浴びる結果になるかもしれない。それくらいの意識をもって誘惑に打ち勝つことができる社員をひとりでも増やすことが、コンプライアンスの強化につながるのだ。

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●ちょっとした気のゆるみでブラック企業のレッテルを貼られる

帝国データバンクが行った「2014年度コンプライアンス違反企業の倒産動向調査」によると、コンプライアンス違反が原因で倒産した企業は219件。前年度比4.8%増で、2010年度から5年連続で増加傾向にあるという。もっともこれは判明している数値なので、実際にはもっと多いかもしれない。

違反の内訳は粉飾、業法違反、談合、資金使途不正、脱税、不正受給、不正投棄、贈収賄など、まさに違反と不正のフルコース。とりわけ不正経理や決算を過大または過少に見せる「粉飾」は、リーマンショックが発生した2008年度と比べると倍増しているという。

ではコンプライアンス違反は、どのようなときに起こりやすいのだろうか。

犯罪心理学の観点からいわれているのは、①ノルマや経営難または生活苦が動機となり、②内部の管理体制の不備が重なって、③「社長もやっている」「みんなもやっている」「前にやった時にバレなかった」などの自己正当化という3つの条件が揃ったときに、違反や不正が起こりやすいのだという。

ノルマがきつくて管理体制も不十分、そして社長自ら不正に手を染めているというのは、まさにブラック企業の典型だが、そもそも初めから「このたび、ブラック企業を立ち上げました」といってスタートする会社はない。

健全な運営を目指していたはずなのにブラック化してしまう原因の1つが、経営者や会社の幹部に労働関係法令に関する知識が十分にないことだといわれる。知らない法令を守ることはできないし、社員を教育することもできない。結果として社員が、あるいは会社という組織として法令違反を犯してしまい、「あの会社はブラックだ」とレッテルを貼られてしまうのだ。

いったん貼られたレッテルを剥がすことは、ほとんど不可能だ。だから、コンプライアンス体制がしっかりしているかどうかを確かめることも、会社選びをする際の重要なポイントになる。

平藤清刀



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