ワンオペ(すき家:事例)
従業員が一人で業務を任される、「ワン・オペレーション」の略語。主に深夜の外食チェーン店などで見られる。
トイレ休憩する暇さえ与えられない、過酷な労働状況
過重労働に加え、危険も伴う最悪な状態
従業員が一人で店を任された場合、休憩時間はもちろん、トイレに行く暇さえない。これが、客が賑わう時間帯であればどういうことになるだろうか?従業員の負担は相当なものである。
こういった状態、いわゆるワンオペが大きな問題となったのが、牛丼チェーン「すき家」の事件だ。すき家では、ワンオペが日常的に行われ、従業員は接客、調理、食器の後片付け、客席・トイレの清掃、さらに仕込みまで全て一人で行うという非常に厳しい状況にあった。同じような事業形態をとる店舗と比較すると、「吉野家」では社員店長とアルバイト店員の最低2人で店舗運営を行っている。
さらにメインのメニュー数だけでも、すき家は吉野家の約2倍、40点ものメニューを取り扱っており、すき家の従業員の負担は計り知れない。
さらに、深夜のワンオペは食い逃げや強盗などの犯罪のターゲットにもなりやすい。なぜなら、もしそのような事態が起こっても、相手が危険物を所持している場合、一人では太刀打ちできない。しかも、追いかけようにも、ワンオペの状態では店を空けてしまうことになるため見逃すことしかできないからだ。
事実、すき家では2011年以降、深夜のワンオペの店舗での強盗事件が相次ぎ、警視庁からも防犯体制の強化の要請を受けている。警察庁の調べによると、牛丼店を狙った全国の強盗事件は、2012年に32件、13年に34件発生(未遂を含む)。そのうち、すき家の被害が85%にものぼると言う。
従業員にとって、過酷な労働に加えて危険性をも含む職場は、ブラック企業と言わざるを得ないだろう。
水面下でなおも続くワンオペの状況
2014年7月、企業のコンプライアンス問題で著名な久保利英明弁護士を委員長とする第三者委員会がすき家を展開するゼンショーホールディングスの実態を調査したところ、従業員からは以下のようなコメントが寄せられた。
「多忙で2週間家に帰れなかった」
「夜の22時から朝の9時、そして9時から15時まで勤務の生活をしていた。寝る時間がない、あったとしてもストレスがたまって全く眠れない」
「休みがあっても、急に他のバイトが休むなど、人手不足で店に呼び出され、ゆっくり休めない」
「金曜日から翌週月曜日は24時間連続勤務が当たり前」
これを受けて、すき家は2014年10月以降、ワンオペの廃止に踏み切ったが、そのお陰で全国の店舗の約60%、1,240ほどの店舗が午前0時~5時の深夜営業休止という結果に。どれほどの店舗がこれまでワンオぺで営業を行っていたかということが分かる。
さらに、2015年4月19日には、「すき家高円寺(南口)店」で一人で勤務していた男性アルバイトが急な体調不良を起こして倒れたということが発覚。幸い、店内に設置されているトラブルホットラインにより救急車が至急手配されたが、すき家ではまだ根強くワンオペが続いていることが明確となった。
すき家側は、ワンオペの状態にあることは、同店のエリアマネージャーしか把握しておらず、ブロックマネージャーや本部の人間は知らなかったとしているが、どちらにせよ、一度のみならず、二度も世間を騒がせた代償は大きい。
今年5月12日に発表された、ゼンショーホールディングスの2015年3月期の決算によると、最終損益は111億円の赤字(前期は11億円の黒字)。牛肉価格の上昇などの理由も挙げられるとは言え、やはりワンオペによる事件の影響がないとは言い切れないだろう。
竹田亮子
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