資格ハラスメント

パワーハラスメントの1つで、社員に資格の取得を強要するハラスメント。建前は任意なので諸費用は本人負担。資格を取得できない社員は昇給も昇進もさせず、場合によっては降格させることもある。

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そんなにたくさん資格を取らせてどうするの?

●リーマンショック前後から急に増え始めた新しいハラスメント

会社の業務に関係が深い、あるいはその資格を持っていなければ業務に就けないという場合に、会社が資格取得のための時間と環境を用意して、教材費や受験料も会社が負担するバックアップ体制を整えることは、昔から多くの会社で行われていた。

ただし不合格なら、受験料を会社へ返済するというペナルティが課せられる場合もあるが、それは常識の範囲内だろう。

ところが、どう考えても会社の業務に関係があるとは思えない、むしろ必要のない資格を取るように上司から命令されるケースが、2008年のリーマンショック前後から増えているという。

会社側の言い分として多いのは「社員のスキルアップを図り、会社としてもレベルアップする効果が期待できる」というものだが、果たして本当にそうだろうか? と首をかしげたくなるケースも少なくない。

たとえば会社の業種がIT関連で、情報処理技術者の資格を取るように命令された社員がいる。一見すると関係がありそうだが、情報処理技術者の資格は2010年の事業仕訳で「実務にほとんど役立たない」とされている。

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●何のために次から次へと資格を取らせるのか?

本当に欲しい資格なら、取っておいて損はない。だが、今やっている仕事とは何の関連性もなく、将来のために取っておきたい資格でもない。受験勉強のために休日を返上し、諸費用も自己負担というのは、本当に社員のスキルアップのためだろうか。

しかも昇給と昇進のためには、会社が定めた資格を取得していることが最低条件とされ、人事考課の時点で所定の資格を持っていなければ降格や降給もあり得るという。

昇進できないだけならまだ我慢もできるだろうが、給料まで減らされてはかなわない。だから理不尽とは思いつつ、資格を取るための勉強に休日を潰さざるを得ない。

こうしたシカハラは、ブラック企業が新たな手口として導入し始めたともいわれている。

本人のやる気はともかく、資格というものは持っておいて邪魔にはならないし、何かの折に役に立つかもしれない。そう考えると、ブラック企業が社員にあらゆる資格を取らせるというのは解せない話だが、そこには腹黒い理由があるのだ。

どんな資格を取らせるかというと、難度の高い国家資格である。「自己啓発」の名目で、合格率10%というような高難度の資格に挑戦させ、合格できなければ昇進させないし給料も減らす。資格試験に失敗したことを理由に給料を減らすのは、もちろん違法である。業務命令で受験させるのであれば、そのための諸費用は全額を会社で負担するべきなのだ。

それともう1つ、最大の目的が「外部との接触を遮断すること」である。これは長時間労働を強いる理由と同じで、いろんな知識や情報に触れることで会社の違法行為に気付いたり、社員が団結したりすることの邪魔をするためである。

土曜日曜も丸一日潰して勉強しないと合格はおぼつかない。そして運よく合格すると、また次の資格を取るように勧める。勧めると言っても、実際には命令である。

サービス残業が社会問題になったから、社内に拘束していると残業とみなされて労働基準監督署から指導が入る。そうすると社名を公表されて、商売がやりづらくなる。だから表向きは「自己啓発」ということで勉強させておけば、社内にいなくても事実上拘束できるというわけで、次から次へと資格試験を受けさせるのである。

求人票や求人広告に「国家資格が取れる」とか「うちの社では年間3資格は当たり前」のような文言が踊っていたら、シカハラを警戒してみよう。そして面接を受ける前に、本当に業務に関連の深い資格を取らせてくれるのか、諸費用は会社で負担してくれるかを事前に調べておくことだ。

 

平藤清刀



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