カタカナ業種/カタカナ職種

日本語に直訳するとイメージが掴みづらいため、外来語のままもしくは和製英語やカタカナ語で言い表した業種または職種。本来の意味を曖昧にして、語感のイメージ先行で使われることもある。

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本当は何をやっているのか分かりにくいカタカナのお仕事

●日本語化しにくい外来語をカタカナに置き換えて表記したのが始まり

求人雑誌や求人サイトを開くと、カタカナで表記される業種や職種が多い。なんとなくスマートなイメージがあるものの、具体的に何をやっている仕事なのかを正確に説明できるだろうか。

たとえば「ファッション・アドバイザー募集」という広告を見て、どんな職場でどんな仕事を思い浮かべるだろう?

じつはこれ、服の販売員のことなのだ。「お客さんとコミュニケーションをとりながら、服を売ってください」という仕事である。
「日本語で言えよ」と言いたくなるが、カタカナ語が氾濫しているのには、それなりの理由がある。

海外から導入された制度や概念には、従来の日本にはなかったものが少なくない。そこで日本語に訳す作業が必要になるのだが、これが簡単ではない。適切な言葉が見つからなかったり、日本語化することが著しく困難だったりする場合に、原語をカタカナで表記することで対応した。

たとえば今のコンピューターの原型はアメリカで発明されたので、元の用語は全て英語である。日本に導入されて「Enter」を「実行」、「CPU(Central Processing Unit)」を「中央演算装置」など日本語化するために涙ぐましい努力がなされたであろう用語がある一方で、「プロパティ」「ツール」「ヘルプ」など原語をカタカナで表記しただけの用語も多い。

またイメージを固定したくない場合には、カタカナ化することでイメージが広がり、意味を曖昧にしたまま伝えられるというメリットがある。それは読み手が勝手に誤解してくれることを、暗に期待しているとも言える。

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●カタカナで偽装するブラックなお仕事

求人広告や求人票には、仕事の内容が分かりやすく書かれていなければならない。だが、一見分かったような気にはなるものの、じつは具体的なことが何も分からないというカタカナの仕事が増えている。職を探している人も、語感で勝手な解釈をするから、入社してみて「思っていた仕事と違う」というトラブルが急増しているのだ。

この「語感で勝手に解釈する」という傾向を逆手にとって、カタカナ語を求人内容の偽装に利用しているのがブラック企業である。

いろんな職種がある中で、今は営業や販売の職種は人気が低いという。若い世代には、見ず知らずの他人とコミュニケーションをとることが苦手な人が多い。それだけでも気が重いのに、物を売らねばならない苦労の多い仕事だ。だから求人する側も、若者ウケするように、言葉の響きが良くてカッコイイというイメージが湧くような和製英語やカタカナ語を考え出して、求人広告のキャッチコピーに使い始めた。

「コンサルティング・セールススタッフ募集!」

何をする仕事か、お分かりだろうか。

カタカナで偽装する際に重要なことは、意味が分かってはいけない。なるべく抽象的で、なんとでも解釈できることが肝心だといわれる。

個々の単語の意味はともかく、コンサルティング・セールススタッフとは、要するにセールスマンのことである。

コンサルティング⇒商品の説明をしながら
セールス⇒売る
スタッフ⇒社員

他にも偽装されやすいカタカナ業種・職種をざっと挙げると――、

ホールスタッフ(風俗店での接客)、コンパニオン(説明係)、お客様サポート(苦情処理)、アミューズメントスタッフ(パチンコ屋の店員)、セールスレディ(販売員)など。

ただ、カタカナで求人広告を出している会社が全てブラック企業というわけではない。何の仕事をするのかよく分からなかったり、聞き慣れない言葉だったりする場合には、問い合わせることに何ら問題はない。勝手に分かったつもりになる前に、必ず確認しよう。

 

平藤清刀



 

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