最低賃金
労働者を雇用するに当たり、賃金の最低額が規定されている。使用者は特別の事情がないかぎり、最低賃金法で定める金額以上を支払う義務がある。また、最低賃金を理由として、労働者の賃金を下げてもいけない。
最低賃金法はすべての労働者が対象
●その差は時給で200円超! 最低賃金の基準は都道府県ごとに異なる
最低賃金は1時間当たりの賃金の最低額のことで、最低賃金法で定められている。ただし金額は全国一律ではなく、都道府県ごとに異なる。
最も高いのは東京で、888円。最も安いのは島根県、高知県、沖縄県などの7県で677円である。東京との差が211円というのは、やはり物価の違いを反映してのことだろう。
〔参考〕地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省HPより)
たとえ労働契約で合意しても、最低賃金より安い賃金での契約はそれ自体が無効である。最低賃金より少ない金額で結ばれた労働契約は、法で定める最低賃金で締結されたものとして扱われる。会社がもし最低賃金法に違反した場合には、50万円以下の罰金が定められている。
あなたが今まで最低賃金法を知らなくて、少ない額しかもらっていなかったら、会社に対して差額の支払いを求めることができることを憶えておこう。
では、アルバイトやパートタイマーの賃金は、会社が勝手に決めて良いのか。もちろんそんなはずはなく、アルバイト、パート、派遣労働者、嘱託など雇用形態や職種・業種、呼称の違いを問わず、最低賃金法は全ての使用者と労働者に適用される。
では「派遣労働者は、派遣元か派遣先のどちらの賃金が適用されるのだろう?」と、疑問に思う方もいるだろう。答えは「派遣先」の最低賃金である。だから派遣で働く人は会社任せにせず、派遣先の最低賃金ぐらいは自分で把握しておこう。
●ブラック企業は最低賃金をこうしてごまかす
社長以下の幹部が、家族と親戚で占められている会社がある。そういう会社で働いている社員が、初めてもらう給料明細を見て驚いた。「研修費」の名目で、基本給の3分の1にあたる金額が天引きされている。しかも会社が負担するべき「振込手数料」も引かれていた。
経理担当をやっている社長の奥さんに「研修費ってなんですか?」と尋ねると、「あなたは試用期間だから」という返事。しかし半年の試用期間を過ぎてもまだ研修費が引かれているので、さすがに抗議したら「そんなことは、一人前の仕事ができるようになってから言え」と逆切れされた。しかも「給料に文句を言ってきた」と専務に告げ口され、試用期間が終わったら正社員にするという話も流れてしまったという。
一方、何かと話題のワタミが、給与面でもブラックだったという事実が明るみになった。
アルバイトを募集する際の時給が、13の都道府県で最低賃金と同じ額だという。零細や中小企業が「人手は必要だが、経営は楽じゃない。給料はこれが精いっぱい」というなら事情は分かるのだが、全国展開している大企業がこれでは「安い給料でコキ使われる」と思われても仕方がない。
ただ特例として、最低賃金を下回る金額でも雇える場合がある。本人の能力や仕事の内容から見て、一般の労働者と同じ賃金を支払うことが必ずしも公平とは言えない場合には、都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金を減額できることになっている。
≪最低賃金の減額が認められる例≫
1.精神又は身体の障がいにより著しく労働能力の低い者
2.試用期間中の者
3.職業能力開発促進法第24条第1項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定める者
4.軽易な業務に従事する者 (以上、厚生労働省HPより抜粋)
こうした特例に当てはまらないのに、自分の賃金が最低賃金より安いと分かったらどうすればよいだろうか。それが違法であることは、おそらく会社は承知している。だから労働組合のある会社なら、組合に相談すればほとんど解決するという。
ブラック企業のように組合も社員代表もない会社なら、公的機関をうまく使うか、お金がかかるけれども労働問題に強い弁護士を頼んで闘うしかない。
平藤清刀
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