クラッシャー上司

部下を育てる気がないばかりでなく、攻撃的な言葉や否定的な態度で意欲をなくさせ、ついには休職や退職に追い込むタイプの上司。自己保身のための悪知恵に長け、プライドだけは誰よりも高い。

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人間的に欠陥があるとしか思えない「イヤな奴」

●本当は有能な人なのに性格に問題あり?

クラッシャー(crusher)とは、いちばんイメージしやすいのが、ビルの解体現場などでよく見かける、外壁のコンクリートを粉砕する重機である。世界一厳しいといわれる日本の耐震基準をパスしたビルを、凄まじい破壊力で壊して行く。クラッシャー上司とは、まさに部下を心身ともに破壊するイヤな奴のことを揶揄(やゆ)して生まれた言葉だ。

上司の仕事は部下を掌握し、組織の力を集中して成果をあげられるように現場を指揮することにある。併せて、将来の指揮者となる人材を育てる責任もある。ところが、クラッシャー上司には、なぜか「人を育てる」という意識がまるで見当たらない。それどころか、隙あらば足をすくい、潰してやろうと虎視眈々(こしたんたん)と狙っている態度さえ見えることがある。

そんな上司はなにもブラック企業だけに棲息しているわけではなく、探せばどこの会社にも、ひとりくらい居るのではないだろうか。いわゆる「ややこしい上司」とか「面倒くさい上司」と呼ばれている人が、あなたの会社にも居るはずだ。

そんな上司たちの姿からは、いくつかの共通点を見出すことができる。

・部下の人格を認めない・否定する
・粗探しをする
・部下や後輩のことを、本人のいないところで悪く言う
・人付き合いの基準が「好き」か「嫌い」しかない
・部下や後輩を自分の思いのままコントロールしたがる
・周りからどう見られているか、とりわけ上司からの評価を過剰に気にする
・「俺の時代は――」が口癖で、古いやり方に固執する
・面倒なことは「任せる」と言って、じつは部下に丸投げする
・成功は自分の功績、失敗は部下のせいにする

こうして見て行くと、社会人としてのコミュニケーション能力に欠陥があるとしか思えない。この上司の下で働く社員たちが次々に心を病んで休職したり、ひどい場合には鬱病になって会社を去っているというのに、会社はなぜこのような上司を放置するのだろうか。

じつは会社にとっては有能な管理職であるが故に、人間的に問題があることを分かっていながら、正面からなかなか注意しづらい事情があるようだ。

●こうすれば心が楽になる「クラッシャー上司」対策

ブラックでもなんでもない健全な会社なのに、クラッシャー上司がひとり居るために、さながらブラック企業に勤めているような気分になってしまう。いうなれば、目の上のたんこぶ。なんとかやっつける方法はないものかと考えてしまうのが人情だが、残念ながら相手は上司だ。正面からやり合ったら、その後ますますサンドバッグにされるか、報復人事でどこへ飛ばされるか分からないリスクを伴う。

クラッシャー上司対策をひと言でいえば、上手く受け流すことである。

具体的には――、
・同じ境遇の仲間と連携する
・愚痴を言い合ってガス抜きをする
・誰かが攻撃を受け始めたら「○○さんから電話です」と、ウソの用事を作って呼び出してあげる
・そもそも理不尽な理由で怒られているのだから、真に受けて悩まない
・「かわいそうな人なんだ」と憐れんであげる

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血の気の多い人は「反論して闘う」と言うかもしれないが、じつはこれが大きな地雷なのだ。さらにブチ切れて、ヒートアップすることは必至である。

そうは言っても、全く効果がないわけではない。クラッシャー上司になってしまう人は、自分が不利になってくると精神論や屁理屈を駆使して、論点をすり替えようとする。そんな上司の挑発には決して乗らず、「それで、話を本題に戻しますが……」という調子で、常に正論を返すようにする。

正論だけを返して、上司から「面倒くさい奴」と思われたら勝ちである。コントロールできないと悟ったら、初めから関わってこない。つまり「いじめ」の構造と同じで、クラッシャー上司は部下が困った顔をすることに快感を覚えるので、困らない相手をいじめても面白くないのだ。

もっともこの方法は、よほどメンタルの強い人にしか勧められない。議論の途中で心が折れてしまったら、ますます立場が悪くなることを肝に銘じておこう。

 

平藤清刀



 

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