ハローワーク
厚生労働省が設置する国の行政機関で、職業紹介、相談、雇用保険に関する事務を取り扱う。正式名称は「公共職業安定所」で、「ハローワーク」はお堅い役所のイメージを払拭するために一般公募で決められた愛称である。
求人票を拒否できない規則がブラック企業の温床になった
●職業を斡旋するだけではないハローワークの業務
ハローワークの主な業務は、仕事を探している人に対して就職または転職の相談に乗ったり、適性や希望に合った仕事の紹介をしたりするほか、会社を辞めたときに雇用保険を申請する窓口でもある。雇用主に対しては、求人を受け付けたり、雇用や雇用保険に関する助成金・補助金の申請を受け付けたりもする。
また、就職に必要な資格や経験に関する情報提供、職業訓練などの相談も受け付けている。
公共職業安定所を略して、昔は「職安(しょくあん)」とか「安定所」と呼ばれていたが、あらゆる年齢層にもっと広く利用してもらうことを狙って、1990年からは一般公募された「ハローワーク」という愛称が主に使われるようになった。
職業安定法によりハローワークは料金を徴収することが禁じられており、誰でも無料で利用できる。パソコンで勤務条件や給与などの希望を入力すれば条件に合った会社を検索できるシステムもあり、職員と対面して相談することに抵抗を感じる人によく利用されているようだ。
またインターネットの普及により、自宅のパソコンで希望する仕事を探せるサービスも提供されている。
ハローワークインターネットサービス
www.hellowork.go.jp/
●求人票の約半分はブラック企業?
2015年1月9日、こんな見出しの記事が産経ニュースから配信された。
≪ハローワークの求人票、苦情9千件超 4割が「虚偽」≫
記事によると、2013年度に全国のハローワークに寄せられた苦情は9380件で、2012年の7783件を大きく上回った。このうち賃金や休日が求人票と違っていたというものが約4割もあって、ブラック企業が求人票に虚偽の記載をして人集めに利用している疑いがあるという。
この件で厚生労働省が、求職者と雇用者の双方から聞き取り調査を行ったところ、苦情の大半は「週休2日のはずなのに土曜日も働かされた」「もらえるはずの資格手当が付いていない」など賃金と休日に関するもので、中には「正社員の求人だったのに、入社してみたら請負契約だった」という悪質なケースもあったという。
これはハローワークに寄せられた苦情に関して行われた調査と分析の結果なので、泣き寝入りしているケースを合わせたら、虚偽記載の実数はもっと多いと思われる。
じつはハローワークがブラック企業の温床になっているという指摘は前々からあって、「ハローワークでは、優良企業を見つけることはできない」という噂まで流れていた。ハローワークに苦情を言いに行っても、窓口に座っている職員が「求人票に書いてあることが、実際と違うことはよくある」と開き直るケースもあったといい、問題意識がきわめて低かったのだ。
厚労省が初めて調査を実施したのが2013年度という腰の重さにも呆れるが、それでも実態がようやく浮き彫りにされようとしているのは、一歩前進と言える。
ハローワークの求人にブラック企業が多い原因の1つははっきりしていて、「求人票を拒否できない」ということ。雇用者が出す求人票は、原則として拒んではならないという規則があるのだ。雇用機会を均等に与えるという趣旨で設けられた規則が裏目に出て、ブラック企業に悪用されているわけだ。
だが、2015年4月17日の参議院本会議で、ブラック企業対策を盛り込んだ「青少年雇用促進法案」が可決され、衆議院の審議を通過した後に今国会で成立する見通しとなった。YOMIURI ONLINEが2015年6月9日に配信したニュースによると、現在は審議中だという。
これにより2016年 3月から、悪質なブラック企業からの求人をハローワークが拒否できる制度も創設される。そうは言っても、これでブラック企業を完全に締め出せるわけではないようだ。求人票を拒否する条件が定められていて、
・新卒の求人のみに適用される
・残業代の不払いなどの違法行為が年間2回以上あること
・求人票を受理しない期間は違法行為を是正するまで及びその後の半年間
ということになっている。
適用範囲を新卒に限定するということは、転職組はこれまで通り、ブラック企業が出してくるウソだらけの求人票に騙されるリスクがあるわけで、厚労省がどこまで本気でブラック企業対策をやろうとしているのか、甚だ疑問である。
平藤清刀
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