プレッシャー

外部から加わる物理的または精神的な圧力。とくに精神的なプレッシャーは、力量を超えた過度な期待をされたり強制されたりしたときに強く感じて、それがもとで身体に何らかの変調が表れることがある。

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責任感の強い人ほど精神的なプレッシャーを感じる

周りが醸し出す「must」の空気がプレッシャーに

ある不動産販売会社に就職したA君。満足な新人研修もないまま先輩と一緒に新規開拓の営業に出されて数カ月間、実地で仕事を覚えさせられた。そしてようやく独り立ちしたものの、何の成果もないまま帰社する日々が続いていた。

そんなある日、上司からの何気ない一言が胸に突き刺さった。

「君と同期のB君、頑張ってるよ」

A君だって頑張っていないわけじゃない。B君はもともと営業の素養があったのだろう。独り立ちしてから、立て続けに新規の契約をいくつも取ってきた。

それにひきかえA君は、未だにゼロ。上司は暗にA君にハッパをかけたのか、それとも本当に何気ない独り言だったかは分からない。だが、A君の心が、得体のしれない圧迫を感じたのは確かだった。

上司の一言があってからA君は、早出・残業を厭(いと)わず、これまで以上に頑張った……つもりだった。

ある日、体の変調に気づいて医師の診察を受けたら、軽度の鬱(うつ)と診断された。

「プレッシャーに負ける」という言葉があるが、A君はその典型的な事例だ。A君は上司の言葉を「成果を出せ。Bを追い越せ」と受け取って、「もっと頑張らなければならない」と責任を感じたのだ。

その結果、精神的に追い詰められて、とうとう心を病んでしまった。さらに頑張りすぎるともっと追い詰められて、最悪の場合は自ら命を絶つという悲劇に発展しかねない。

プレッシャーはなぜ苦しいのか?

ストレス下における脳の働きの研究では第一人者とされる、シカゴ大学心理学准教授シアン・ベイロック氏が、「人はなぜプレッシャーの中で苦しむのか」というテーマで科学的な検証を行っている。そのベイロック氏が、プレッシャーを「苦しい」と感じる原因を解明した。

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人の脳は、プレッシャーを与えられると、前頭葉前部が正常に機能しなくなるという。このことにより、思考や論理を司(つかさど)る部分も正常に機能しなくなる。それは「失敗したらどうしよう」という恐れが、脳のリソースを占有してしまうからだ。

たとえば、ふだん日常的にこなしている業務でも、相手が大事な取引先で些細(ささい)なミスも許されないという場合、「ミスしてはいけない」と思い詰めるあまり、ふだんやっている仕事なのにその時に限ってミスをしてしまうということが起こりがちだ。

つまり「大事な取引先だ」「ミスは許されない」という細かいことに神経を集中しすぎて、かえって全体の思考の流れを邪魔して失敗に結びついてしまうわけだ。

同じようなことは、スポーツの試合や入試など、ここ一番という大事な場面で、誰しも一度は経験したことがあるはず。

大事なことをやる前こそ、細部は成り行きに任せて「ふだんと同じようにやりなさい」といわれる。

プレッシャーがなぜ苦しいのか、科学的なメカニズムを知っていれば、それを逆手にとって上手くやり過ごすことができるようになるのではないだろうか。

 

平藤清刀



 

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