雇用契約
当事者の一方が労務に服することを約束し、もう一方がその対価として報酬を支払うことを約束する契約。一般的に書面で交わされるが、口約束でも契約の効力は有する。
「難しそう」と敬遠するな。ポイントを押さえれば意外に分かりやすい
労働者と雇用主は「対等」の立場で雇用契約を結ぶ
労働関係の法律でよく知られているのが労働基準法をはじめとする労働三法。契約関係については、別に労働契約法という法律がある。
どちらも労働者の権利を守るための法律だが、次のような違いがある。
基準法:労働基準法に基づき、違反があった場合には労働基準監督署において是正の監督指導等を行うもの。
契約法:労使間のトラブルを防止するため、労働契約法において民事上のルールとして定められているもの。(厚生労働省HPより)
労働契約法でとくに注目するべきなのが第3条で、ここには「労使対等の原則」が謳われている。
労働契約法 第3条〔労働契約の原則〕
労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
つまり「雇い主が労働者より強い立場」であることを事実上否定し、両者の関係を「対等である」と定め、さらに「合意」に基づいて締結するものであると明記している。
また労働基準法にも、これと同じ趣旨の規定がある。
労働基準法 第2条〔労働条件の決定〕
労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
契約の始まりを「締結されたとき」とするなら、いつかどこかで「終わり」がある。一般的には労働者が退職したとき、または解雇されたときだが、とくに解雇には雇用主に慎重な態度が求められている。客観的に合理的な理由を欠く場合や、社会通念上相当な理由のない解雇は無効である。
必ず明示しなければならない労働条件
法的には必ずしも書面によらなくてもよいことになっているが、口約束だけでは曖昧になりがちな労働条件。
証拠が残らないのをいいことに、雇用主の都合で勝手に変更されたり、トボけられたりしてしまう恐れがないとはいえない。
そこで賃金や労働時間、休日など重要な事項については、正社員はもちろんアルバイトやパートタイマーに至るまで、すべての従業員に対して必ず「労働条件通知書」で明示しなければならないことになっている。
「労働契約」という言葉を聞くだけで「なんだか難しそう」と敬遠してしまう人がいるかもしれない。
分かりやすくするために、厚生労働省のホームページで公表されている「労働契約の基本原則」を表にまとめてみた。
◇労働契約の基本原則
労働基準法で定められている事項 | 労働契約法で定められている事項 | |
労働条件の明示等 | 使用者が労働者を採用するときは、賃金、労働時間、その他の労働条件を書面などで明示すること。 | 労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が「合理的な内容の就業規則」を「労働者に周知させていた場合」には、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になる。 |
契約期間 | 契約期間に定めのある労働契約(有期労働契約)の期間は、原則として上限は3年。なお、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者との労働契約については、上限が5年とされる。 | 使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる場合は、その目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮すること。 |
労働契約の変更 | 合意による変更の場合でも、就業規則に定める労働条件よりも下回ることはできない。 | ・労働者と使用者が合意をすれば、労働契約を変更できる。・使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできない。なお、就業規則によって労働条件を変更する場合には、(1)内容が合理的であること(2)労働者に周知させることが必要。 |
平藤清刀
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