パタニティ・ハラスメント(パタハラ)

「男性社員とは」または「父親とは」こうあるべき――という固定概念によって、部下の育児休暇を妨げたり嫌がらせをしたりする行為。マタハラの男性版として、近年にわかに問題視され始めている。

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「男はこうあるべき」という旧態依然とした固定観念が男性の子育て参加を阻害する

●「会社と子ども、どっちが大事なんだ!?」と迫る上司

パタニティとは「Paternity(父であること・父系)」のことで、そこに「いやがらせ」を意味する「harassment」がくっついた「パタニティ・ハラスメント」という新たなハラスメントが問題視されている。

次の会話はパタハラの典型的な例だが、上司と部下の間でよくありそうな、こんなやり取りを1度や2度は耳にしたことはないだろうか。

部下「保育園から、子どもが熱を出したと連絡があったので迎えに行きます。早退させてください」
上司「あほか、お前。奥さんに行ってもらえよ。なんでお前が行くんだよ?」
部下「妻は出張中で、夜まで帰らないんです」
上司「じゃあ、おばあちゃんとかおじいちゃんは?」
部下「近くに住んでないので、すぐ迎えに行けるのは自分しかいません」
上司「チっ! 今日はしょうがないけど、子どもが熱出したくらいで会社に迷惑をかけるような奴は、うちには要らんからな」

男は外で仕事をして女性は家庭を守るものという、前時代的な固定観念にとらわれている上司には、この部下が仕事を軽視しているようにしか映らないのだろう。

この上司のどこがパタハラにあたるか、お分かりだろうか。

じつは最初のセリフ、「なんでお前が行くんだよ?」と言って部下の「子供のために早退させてほしい」という申し出を却下している。この時点でパタハラが成立するといわれているのだ。

もっともパタハラはまだ新しい概念なので、はっきりした定義がない。「パタハラ」という言葉も、今後は別の言い方に変わるかもしれないし、どの時点でパタハラが成立するかという基準も変わるかもしれない。

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●女性90%超に対して男性はわずか1.89%

これは厚生労働省が2012年に行った「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」の中で、育児休暇を取得した男女の割合である。

一方、日本労働組合総連合会(連合)が調査した「“育児と仕事”に対する意識」の中で、
「育児・介護休業法という法律があることを知っている」と答えた男性の割合は70%、その内容まで知っているという回答が約半数を占めている。

ところが実際に育児休暇を取った男性の割合がたったの1.89%というのは、どういうわけだろう。

連合の同じ調査の中で「職場でパタハラをされた経験がある」が11.6%、「周囲でパタハラに遭った人がいる」が10.8%という結果が出ており、男性が育児休暇取ろうとしても、そのことで上司から嫌がらせを受ける実態が少なくないことが明らかになった。

つまり「育児・介護休業法」があって男性が育児休暇を取れることを知ってはいるけれども、実際に休むのかというと、後難を恐れて躊躇(ちゅうちょ)する男性が多いということだ。

2010年6月、当時の長妻昭厚生労働大臣は、国会で「少子化打開の一助として“イクメン”という言葉を流行(はや)らせたい」と発言。

男性も積極的に子育てに参加したり育児休業の取得を促進したりすることなどを目的とした「イクメンプロジェクト」を始動させた。

厚労省のホームページに「『イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男のこと』をコンセプトに、社会にその意義を訴えてまいります」とあるように、積極的に育児に取り組んで自らも成長するお父さんを増やそうとする国家的な取り組みである。

こうした国家プロジェクトの存在を知らないか、知っていても関わりたくないのか、いずれにしても男性の育児休暇を妨害するというのは、時代の流れに逆行する行為なのだ。

 

平藤清刀



 

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