テクノロジー・ハラスメント(テクハラ)

「テクニカル・ハラスメント」とも呼ばれ、パソコンをはじめとするIT機器の操作に不慣れな人に対する嫌がらせ。近年では「テクノロジー」の範囲が、他の事務用機器にも広がっている。

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ハイテク時代が生んだハラスメント

●あなた、パソコンも使えないの?

かつてファクシミリ(FAX)がまだ珍しかった時代の話。

ある会社の課長が、得意先への連絡をFAXで送らねばならなくなった。いつも部下にやらせているのだが、あいにく休暇を取っていて不在。

一大決心して、見よう見まねで操作してみたら、なんとか送信にこぎつけた。だが、間もなく先方から電話がかかってきて、「何枚送ってくるんですか。1枚で充分ですよ」とお怒りの様子。課長は、相手がなぜ怒っているのか分からない。

「だって、上から入れても、下からすぐ戻ってくるんだよ」

課長はFAXに挿入した原稿が、そのまま相手に届くと思っていたという、嘘のような笑い話がある。

FAXに不慣れな人が多かった時代には笑い話で済まされていたようなことが、FAXやコピー機は操作できて当たり前、パソコンが事務仕事の主流になっている今、新たなハラスメントとして問題になっている。

「コピー機ぐらい、コンビニにも置いてある時代なんだから、慣れといてくれよ」
「パソコンも使えないのか。お前も使えないな」

などと、わざわざ苦手な機器を使わせてイヤミを言ったり嫌がらせをしたりして困らせる行為は、かつてはパワハラの範疇に入っていたが、今は「テクハラ」という新たなハラスメントとして認識されるようになってきた。

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●テクハラは労災や損害賠償の対象になる

もともとは、不慣れなパソコンに四苦八苦している中高年をバカにして笑っていた行為だが、今では年齢や性別に関係なく行われている。またパソコンに限らず、機能や操作が複雑化する一方の事務機器、そして家電製品に至るまで、その対象が広がっている。

前出の、苦手なことが分かっているのにパソコンを使わせてバカにするというのは、上司が部下に対してする嫌がらせだが、逆のパターンもある。

「出張の報告を早く出せ」と言ってきた上司に「メール入れときましたよ」と、その上司がメールソフトの立ち上げすらままならないほどパソコンが苦手なことを知っていながら言うのも、れっきとしたテクハラになる。

つまりテクハラが他のハラスメントと違う点は、たとえばパソコンなどのITスキルに習熟している者が、そうでない者に対して行う嫌がらせだということ。だから極端な場合には、新人OLが上司に対してテクハラをするような場面も起こり得るわけだ。

上司にもプライドがあるから、まさか新人に向かって「分からない」とか「教えてください」とは言えない。訊(き)くに訊けずかえって自分で自分を追いつめて、酷い場合には心を病んでしまう。

テクハラはパワハラの派生型という考えから、不法行為として法的な問題に発展する恐れがある。過去に自衛官が自殺した事件では「他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は原則として違法」という判例が出ており、テクハラも「心理的負荷を過度に蓄積させる行為」と認定されたら、加害者はもちろん会社にも損害賠償責任が及ぶ可能性がある。

優越感に浸って他人を笑うというのは、良識ある大人の行為とは言えない。苦手なことやできないことを無理にやらせても効率が悪いだけでなく、相手からも恨まれる。

どうせ仕事で必要なスキルなら、苦手なことを克服できるように教えてあげる心の余裕がほしいところだ。

 

平藤清刀



 

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