社名公表(厚生労働省)

厚生労働省はブラック企業対策の一環として、2015年5月18日から、違法な長時間労働などで年3回の是正勧告を受けた大企業の社名公表に踏み切った。だが、対象が大企業に限定されているため、実効性が疑問視されている。

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厚生労働大臣は「決意の表れ」というが……

●公表の対象を広げて過重労働を減らすのが狙い

是正勧告というのは強制力を持たない行政指導だが、社名を公表された会社は世間からブラック企業の烙印を押されて、企業イメージが著しくダウンする。

そうなると就活中の学生や転職先を探している社会人から敬遠されるため、あらたな人材を採用しづらくなる。また、株価や業務にも悪影響が出ることは必至である。

考え方しだいでは、このような「社会的制裁」のほうが、法的なペナルティを受けるよりダメージが大きいともいえる。

これまでも社名の公表は行われていたが、その対象になっていたのは是正勧告に従わず書類送検された企業に限られていた。それが「年3回の是正勧告を受けた企業」にまで対象を広げたのは、長時間労働や残業代の不払いなどの違法行為が後を絶たないからだ。

ちなみに2013年に厚労省が是正勧告を発した事業所は11万2873件で、うち書類送検まで至ったのは、全体の1%にも満たない1043件だった。

塩崎恭久厚生労働大臣は記者会見で「決意の表れと取ってほしい」と発言したが、実際に対象となるのは大企業だけなので、さて効果はいかほどのものだろうか。

●企業のほとんどが中小なのに、なぜ大企業だけ?

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厚労省が社名公表の対象にするのは、複数の都道府県に拠点を置く大企業で、次に挙げる2つの条件の両方に該当することとされている。中小企業は対象外だ。

①社会的に影響力の大きい企業であること
②「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められる実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと

①はいわゆる「大企業が対象である」という意味だが、そもそも「どこから大企業か」という法的な定義はない。資本金、従業員数、業種によっても異なるため、中小企業との境界は曖昧だ。

②をもう少し噛み砕いてみると、1つの事業所において時間外および休日の労働時間が1カ月に100時間を超える従業員が、その事業所で働いている総員の4分の1以上か10人以上のどちらかで、1年程度の間に複数の事業所で是正勧告を受けた場合に「組織的な問題」とされる。

では、なぜ大企業だけが対象なのか? 日本では中小企業が圧倒的に多く、ブラック企業の条件に当てはまる会社も多い。

社名公表の対象ではないことに安心して、今まで以上に過重労働がはびこるのではないかと懸念されている。そうでなくても、大企業でさえ、労働時間の記録を改ざんするという事例が、さっそく明らかになっているのだ。

社名公表が過重労働の「抑止力」として期待される一方で、実効性を疑問視する声は決して少なくないのである。

この問題を解決するには、
・なぜ残業が発生するのか
・本当に必要な残業か
・人員は適正に配置されているか
という根本的な問題を洗い出さなければならない。

現状を無視した理想論と言われるかもしれないが、抜本的な問題解決に取り組まない限り、「調査逃れ」や「記録のごまかし」に走る企業を増やすだけの結果にならないだろうか。

 

平藤清刀



 

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