学歴ハラスメント(学ハラ)

昇給や昇進などを決める際の基準を本人の能力よりも学歴に置いたり、業務上のミスを学歴のせいにしたりするハラスメント。高学歴者もその対象になることから、低学歴を差別する「学歴差別」とは異なる。

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学歴の壁は一生つきまとうのか?

●大学中退は高卒扱い、しかも後輩が自分の上司に!?

求人雑誌やハローワークの求人票に、よく「高卒以上」とか「学歴不問」などと書かれてある。学歴が必要なのかという議論はさておき、就職や転職の際にはまず学歴が大きな壁になることが多い。

とある不動産管理会社に中途採用されたAさんは、大学を2年で中退した。応募資格には「高卒以上」とあったから、大学中退なら問題ない。宅建の資格を持っていたので、すぐに採用が決まった。

ところが入社してみると、そこは凄まじい学歴社会だった。よほど有名な大学でない限り、「大学に在籍していた」という経歴は無視される。中退は高卒として扱われ、昇進も昇給も自分より後から入社した新卒入社組に追い抜かれたばかりでなく、社内カーストの最下層に置かれた。

そして入社10年も経った頃、とうとう後輩が自分の上司になった。新入社員の時、Aさんが教育係として指導した後輩だった。

驚いたのは、その後輩上司に名前を呼び捨てにされたことだ。かつての師弟の情など、学歴の前には無意味だった。

書類の誤字脱字といった些細なミスをネチネチと責められ、何かにつけ「あなたはどうせ○○大中退だから仕方ないけど」と、本人の能力とは関係のない次元でイヤミを言われ続けたのである。

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●学歴差別と違うのは、高学歴者もハラスメントのターゲットになること

学歴差別と学ハラのいちばんの違いは、学ハラは高学歴でもターゲットにされることだ。

たとえば、京都大学を卒業して機械メーカーに就職したBさんには、機械の設計に欠かすことのできない強度計算がよく分からない。

そんなときに京大より偏差値の低い大学を出た先輩や上司から、
「お前、京大出のくせにこんなことも分からないの?」とイヤミを言われる。だが、分からなくて当たり前。Bさんは文系だった。

文系の学生を設計部門に配置する会社の人事がそもそもおかしいのだが、高学歴を嫉妬されて「生意気だ」「困らせてやれ」と理不尽な嫌がらせを受けるケースは決して少なくない。

また、最近Twitterで少し話題になったようだが、大卒の新入社員が高卒で年下の先輩に対して敬語を使うことに抵抗を感じるという。

その理由が「大学で4年間、時間とお金をかけてスキルを身に着けてきたのだから、たかが1年や2年早く入っただけで高卒の方が格上になるのか?」ということらしい。

「社会人の先輩であることは認める」としながらも、「大学で学んだことが無に帰す危機感」を抱く者がいるというのだ。

これがエスカレートして、年下の先輩をバカにするような態度をとるようになると、新たなハラスメントに発展するのかもしれない。

ちなみに欧米の企業では、管理職コースとそれ以外のコースがはっきり分かれていて、大学卒や院卒の多くは初めから管理職コースで入社するという。そして社歴に関係なく、高卒で入社した先輩の上司になることもある。

日本の企業では、初めから管理職を約束されたいわゆる「幹部候補生コース」が欧米ほど明確でなく、大卒で入社したら、高卒と比べて昇進が早いことが習慣化されているだけである。

「お前はエリートコースなのか? それとも平社員から叩き上げるコースなのか?」という線引きがきわめて曖昧になっていることも、学ハラが発生する原因の1つではないだろうか。

 

平藤清刀



 

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