○○隠し
「○○」には「労働災害」「パワハラ」「セクハラ」など、企業が犯しがちな不法行為が入る。明るみになると社会的信用を失いかねないため、被害者に口止めをしたり、退職に追い込んだりする事例がある。
対外的には「無いこと」になっているから隠したがる
●「労災に加入してないから補償はないよ」は通用しない
労働災害(労災)とは、業務上で被ったケガや病気などのことで、通勤や帰宅の途中で発生した場合も含まれる。
会社は労災保険に加入することが義務付けられており、労働災害が発生した場合には速やかに、所管する労働基準監督署へ所定の書式で報告することが労働安全衛生法に定められている。
だが、会社が労災保険を使うことを躊躇(ちゅうちょ)して、労働者との間でしばしばトラブルになる。
たとえば作業中に軽いケガを負ったような場合だと、
「この程度のケガなら、会社が治療費を出すから、保険は使わなくていいよな」と、労災の申請を嫌がるのだ。
なぜなら、労災保険を使うと保険料が上がることを恐れているのである。自動車保険と同じで、事故件数が増えると保険料が上がる。
だから会社としては、なるべく労災保険を使いたくないという心理がはたらいて、労災隠しをしてしまうのである。
会社によっては「ウチは労災保険に入ってないから」と言って、社員の訴えを初めから相手にしない悪質なケースもある。
経営者なら知らないはずはないのだが、従業員をひとりでも雇っていたら労災保険に加入する義務がある。もし加入していないことが発覚したら、過去にさかのぼって保険料を納めなければならない。
また、社員が被った事故が労災に当たるか否かを判断するのは、会社ではなく労基署である。
だから会社から「これは労災に該当しない」とか「労災の対象は正社員だけだ」などと言われたら、労災隠しの意図があるとみて間違いない。労災の対象は「すべての従業員」なのだ。
●会社はセクハラとパワハラから守ってくれない
セクハラやパワハラなど様々なハラスメントが社会問題になって、各企業ではこれの撲滅に取り組んでいる――と、世間では思われている。実際、真剣に取り組んで成果をあげているケースもあるが、それでもなお「表から見えなくなっただけ」という相談が後を絶たないという。
上司から執拗(しつよう)にセクハラを受けているOLが、会社に設置されている相談窓口に被害を訴えたところ、
「当社ではセクハラは一掃されたはずです。あなたの思い過ごしでしょう?」という対応をされたという。
対外的にもセクハラは無いことになっているので、問題として取り上げることはできないと一蹴されたのだ。
しかも、セクハラ被害を訴えたことで「会社のイメージを下げる行為をした」という、ほとんど言いがかりともいえる理由で地方の支社へ異動するか退職するかの選択を迫られたケースもある。
会社にかぎらず「組織」というものは、基本的に自己防衛をするものである。とりわけ不祥事には神経質で、セクハラ、パワハラなど企業イメージを著しく損なう破廉恥行為は、たとえ認知していても対外的には「無いこと」にしようと躍起になる。
だからあんまり騒がれて、表沙汰にされては困る。そうかといって、それを理由に解雇することもできないので、自分から辞めるように圧力をかけるわけだ。
そうして追い込んでおきながら、後で法的手段に出られて、かえって厄介なことになることも恐れている。だから「本人には厳重に注意しておくから、どうか黙っておいてくれ」と言い含めて、退職金が規定より多く支払われることもあるという。
それは事実上の口止め料で、過去に同じようなケースで辞めていった先輩がいたかもしれないし、後輩がまた同じ被害に遭うかもしれない。
誰かが勇気をもって社会に訴えることでしか、このような隠ぺい体質はなくならないのかもしれない。
平藤清刀
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