富士火災海上保険株式会社

給料手取り2万円!?
「生存権を侵害された」社員が提訴

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“成果主義”――言葉だけは勇ましいけれど……

成果主義とは、業績を上げたらそれだけの評価を得て、給与や人事考課に反映される仕組みであるはず。ところが、行き過ぎた成果主義が裏目に出て、勤続23年のベテラン営業マンAさんの給料手取りが、わずか2万2000円という現象が起こったのが富士火災海上保険株式会社。2005年6月のことだった。

「これでは暮らして行けない」

当時52歳のAさんは給与明細を見てわが目を疑い、そして途方に暮れた。奥さんはガンを克服したばかりで、体がまだ本調子ではない。娘さんは体が弱く、フルタイムで働けないため、アルバイトで収入を得ていた。

自宅は一緒に暮らす両親のもので、ローンを抱えていないことが不幸中の幸いだった。

Aさんは、あるメーカーで営業マンとして勤めていたところ、30歳のときにその手腕を買われて同社に転職した。顧客から飲みに誘われるほど、プライベートでも信用を得ていた営業のプロである。

それにしても、なぜ「手取り2万2000円」という事態になったのか。

当時、同社では「業界一厳しい成果主義」といわれる「増加手当繰越清算制度」を導入していた。

その仕組みを簡単に説明すると――

売り上げ成績が上がると給料に反映される。これが「増加手当」。頑張った分だけ給料が上がる、営業マンならではの制度だ。ところが「繰越清算」が曲者(くせもの)だった。

売り上げが下がることもある。そうすると、過去にさかのぼって、すでにもらった「増加手当」を、給料から天引きで返還させられるのだ。

しかも、「売り上げが最も多かったとき」に基準が設定されるから、売り上げが伸びつづけなければ給料が減るという、まったく理不尽なシステムなのだ。

さらに、顧客に支払った保険料も「マイナス」としてカウントされるという。たとえば自然災害で被害を受けた人が、保険料を請求してくる。審査して問題なければ、契約に従って保険料を支払わねばならない。その結果、担当営業マンの評価が下がるというのだ。

Aさんは言う。
「自然災害で保険料の支払いが増えたことまで、営業マンの責任でしょうか」

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手取り2万2000円は憲法が保証する生存権の侵害

Aさんの当時の基本給は14万2000円。成果給として3万9545円と、営業支援金として8000円をプラスして18万9545円。そこから税金や社会保険料を天引きされるのは、一般のサラリーマンと同じだ。Aさんの場合はさらに「繰越清算」として7万4437円が天引きされて、手取り2万2000円になったという。

いくら計算上そうなったとはいえ、これでは両親と妻子あわせて家族5人は生活できない。憲法25条の1項に定める「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、すなわち「生存権」を侵害する行為だとして、正当な賃金の支払いを求める仮処分申請を東京地方裁判所に申し立てた。

この事件は2005年6月~7月にかけての出来事だが、10年経った今はどうだろうか。

外資の傘下に入ったことで、少しは改善されていることを願う。

手取り2万2000円という極端な金額ではなくても、同社には行きすぎた成果主義のせいで手取り10万円台という営業マンが少なくないという。そのため優秀な営業マンほど早期に退職してしまい、営業力が低下した同社は2013年、AIGスター生命保険株式会社の完全子会社になっている。

 

関連用語:最低賃金 ペナルティ 罰金・罰則

 

平藤清刀



 

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