富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)

地上デジタル放送のシステム開発で多忙を極めた末の悲劇
逼迫(ひっぱく)する納期とプレッシャーの中で若きSEが犠牲に

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同期入社の2割が精神疾患で休職

富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(FUJITSU SOCIAL SCIENCE LABORATORY LIMITE/略称:富士通SSL)は富士通の完全子会社で、ソフトウェア開発、システム構築などの業務を行っている。

テレビ放送がアナログから地上デジタルへ切り替わるのに伴い、TBSのシステム開発を行っていた。

そのプロジェクトに携わっていたSEの男性が、長時間労働と劣悪な労働環境、そして極度のプレッシャーからうつ病を発症。

休職と復職を繰り返しながら、ある日、医師から処方された治療薬を大量に服用して死亡した。

この男性は2002年4月に神戸にある専門学校を卒業して入社。SEとして働いていた。

2003年の春頃から地上デジタル放送のシステム開発を行うプロジェクトが始まり、業務は多忙を極めた。

地上デジタル放送への切り替えは国家プロジェクトということもあって、納期が厳格に定められていた。絶対に遅らせるわけには行かない。

出勤してから深夜まで仕事をしたり、日によってはそのまま朝を迎えたりすることもあったという。

そんな勤務状態が連日続いて残業が月に100時間を超え、体調に異変を感じて診察を受けた結果「不安抑うつ状態」と診断された。

精神に変調を来(きた)していたのは、この男性だけではなかった。同期入社した74人のうち、2割近い12人が精神を病んで1カ月以上休職するか、すでに退職していた。慢性的な人手不足のため、プロジェクトへの増員は望めなかった。

当時の職場は、狭い部屋に何人も押し込められ、空気が淀んで二酸化炭素濃度が高かったという。

しかも「難易度の高い単純作業」で達成感が乏しい上に、度重なる仕様変更。しかも納期に間に合わせるためにミスが一切許されないから、社員たちは心身ともに疲弊しきっていた。

長時間労働を余儀なくされるのに仮眠を取れるスペースもなく、終電を逃した社員がデスクでうつ伏せになって朝まで仮眠を取るという状況だった。

認定されなかった労災を裁判で覆す

睡眠障害からうつ病を発症した男性は、2003年11月にいったん休職する。その後は治療を続けながら復職と休職を繰り返すものの、状況は何ら変わることなく、自身のブログに「このまま生きていくのは死ぬよりつらい」と書き込んでいる。

2006年1月、会社は男性がうつ病を患っているのを承知で、達成困難なノルマを課し、男性の症状はさらに悪化した。そして同月のある日、治療薬を大量服用して亡くなるのである。27歳だった。

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遺族は、薬の大量服用と過酷な業務には因果関係があるとして、同年4月に川崎北労働基準監督署へ労災を申請した。

だが労基署は労災を認定せず、遺族補償給付と葬祭料を支給しないことを決定した。納得できない遺族は、神奈川労働局労働者災害補償保険審査官に対して審査を請求したが、これも棄却。さらに労働保険審査会に出した再審査請求も棄却された。

この再審査請求と相前後して、遺族は国に対して、川崎北労基署が下した判断の取り消しを求めて、東京地方裁判所へ提訴している。

2011年3月25日に下された判決で、ようやく遺族の思いが通じた。東京地裁はこの男性の過労死労災を認めたのである。

判決の要旨は次の通り。

長時間労働が続いていた。
・デジタル放送の開発プロジェクトに人員の補充がなかった。
・仮眠できる場所がなかった。
・ミスの許されない単純作業が長時間にわたり、心理的負担が高かった。

つまり治療薬の大量服用は業務上の疾病であるうつ病のもとで起こったことであるとして、遺族の訴えを認めて川崎北労基署の不支給処分は取り消された。

尚、被告となった国側が控訴するか否かが注目されたが、若者の労働問題に取り組んでいるNPO法人「POSSE(ポッセ)」が中心となって、厚生労働省に対し「控訴するな」運動が展開された。国側が控訴を断念して判決は確定した。

結果的に国側は控訴を断念するのだが、その理由を「労基署の判断に裏付けが取れなかった」としており、POSSEの活動が判断に影響したか否かについては言及していない。

私たちは地上デジタル放送を当たり前のように楽しんでいるが、そのシステム開発の陰ではこのような悲劇が起こっていたのだ。

 

関連用語:過重労働と過労死 鬱(うつ) ノルマ(過重ノルマ)

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